これからの成長戦略の論点 第4回:新興国市場の現在地と未来
文責:ジェムコ日本経営 成長戦略コンサルティング事業部 事業部長 森岡 琢
■新興国とは?
皆さんにとっての新興国とはどの国を指すでしょうか?
既に形骸化した言葉かもしれませんが、BRICsやVISTA、NEXT11に属している国が分かりやすいかもしれません。
このコラムでは皆さんのビジネスにとって身近な中国とASEANをテーマとして論じてみたいと思います。
■中国ビジネスと政策
中国ビジネスを語るうえで避けては通れない2本の政策があります。
ひとつは「インターネット+(プラス)」もうひとつが「中国製造2025」です。
「インターネット+」は、モバイル、クラウド、ビッグデータ、AI/IoT等を発展させる内容であり、「中国製造2025」は、2025年までに世界の製造強国入りし、2035年には製造強国の中位レベルに発展させ、2045年に製造強国のトップになるという方針を纏めたものです。
「インターネット+」と「中国製造2025」は密接な関係があり、中国の製造強国としての地位確立をデジタル技術によって実現させるという目論見を持っています。
ジェトロやシンクタンクなどが要点を日本語訳していますので、ぜひ一度目を通しておくとよいでしょう。
■中国市場の現在地
上記の政策に則って、2025年の政策目標実現に向けて、BtoB市場、BtoC市場ともに混乱を伴った変革期にある、というのが筆者の理解です。長期に渡る成長期は終わりを迎え、社会・生活を成熟・安定させるための実験や技術の導入を試行錯誤しながら進めています。この実験や技術の導入の試行錯誤のサイクルスピードが非常に早く、ビジネスチャンスを追い求める日系企業はついていけない状況です。
あっという間にインフラとして根付いたデジタル決済、どの国よりも先行している電気自動車(普及・浸透にはまだ時間がかかりそうですが)、独自の進化を遂げるニューリテールなど、幅広い領域で同時多発的に実験と導入が行われています。
またGAFAの対抗軸というわけではありませんが、BATISと呼ばれる中国版プラットフォーマーが台頭し、巨大なビジネスエコシステムも形成されており、日系企業にとってはどのビジネスエコシステムが自分たちのビジネスに影響を及ぼしてくるのかという検討も必要になってくるでしょう。
■中国市場の今後
中国が中長期的にどんな社会を目指しているかというと、それは「安定」と「超効率」に尽きます。安定社会実現・超効率社会実現に資するビジネスエコシステムにヒト・モノ・カネが集まってきます。
モビリティ業界や医療介護業界、食品業界が代表的な業界ですが、どの業界であれ、デジタル技術の活用が前提となるビジネスモデルを組み立てる必要があり、ここがデジタル活用の知見がまだ十分ではない日系企業にとっての足枷、第4回は以上です。
次回はASEAN市場についての考察と新興国市場で成長するための要点を解説します。