生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第10回 チョイ置き・2度置き・入れ替え】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。これからこの「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
10回目の今回は、「チョイ置き」「2度置き」「入れ替え」についてです。
目次
あちらこちらにモノが置かれていないか?
診断や支援で訪問させていただいた工場で目立つ問題に、「モノのチョイ置き」と「2度置き」があります。
モノが置かれているところを、ストックポイントといいます。これが実に多く、あちらこちらにモノが置かれています。置くべきところがはっきり決められていないことも一つの原因です。
置くところ以外においてしまう「チョイ置き」
置くところが決められていてもそれ以外のところに置いてしまう・・・これが「チョイ置き」です。モノを持っていて、あるいは運んでいて、他のことをするために持っているものを、そこらに“チョイ”と置いてしまう。作業が終わって工具などを置きっぱなしにするのは、5Sをきちんと理解していないためにしてしまう行為です。
チョイ置きの問題点は、モノが散乱することだけではありません。チョイ置きすると、置いた本人がそのことを忘れてしまうことが問題です。「どこに置いたか、チョイ置きしたので思い出せない」ということが起こり、探す時間がロスとなります。
「2度置き」も気が付きにくいロス
「2度置き」も気が付きにくいロスです。
●1箇所の作業エリアで何箇所もモノが置かれている
●材料をいくつかまとめて取って設備のそばに置く
●1つ1つ加工して、加工が終わったものをまたそばに置く
●1つのかたまりが全部加工し終わったら、まとめて箱にいれる
これだけで4箇所のストックポイントが発生しています。いくつかまとめて取るということを作業者はしがちです。この行為は決して効率を高める行為ではなく、全く意味のない行為です。
場所の限定が「在庫削減」「スペース縮小」「リードタイム短縮」につながる
モノが置かれるべき場所を限定し、最小にして、必ずそれを守ることで工場内にモノが驚くほど少なくなるはずです。在庫減少にもつながりますし、スペースに余裕もできます。そのほかにも、停滞が少なくなるからリードタイムも短縮できます。
置き方と置き場所を徹底的に改善・削減することで多大な効果を意味出すことができるのです。
モノを加工しないことは「すべてムダ」と考える
モノを加工しないことは「すべてムダ」であると考えてください。そうするとモノを置いたり、運んだり、まとめたり、といった行為はできるだけ無くさなければならないことがわかります。
モノが工程を流れて行く過程で起こる「容器の入れ替わり」
モノが工程を流れて行く過程で、入れている容器が変わっていくことがあります。加工の前後で変わるのは問題ありません。しかし、加工を伴わないで容器に入れ替えるだけの行為は、全くのムダ行為です。
小分けにするとか、ワークの形が変わったので容器を変えるとか、運搬しやすいように容器を別なものに入れ替えるというのは一見合理的なようですが、実は付加価値を全く高めていないムダな行為です。それだけでなく、入れ替えることでワークに傷がつく機会が増えていることになるのです。これは品質的に問題です。
荷姿が「材料投入から完成品まで変わらない」のが理想的
荷姿が、材料投入から完成品まで変わらないというのが理想的です。容器の種類を準備したりする必要がないからです。容器が変わると、工程の途中で必要な容器が足りなくなるということも生じます。
容器に入れたまま停滞しているストックが増えると、このようなことが発生します。そのため容器を探したり、間に合わせに別な容器に入れておいて、後から入れ替えるというようなことを当たり前に行ってしまうのです。容器からワークを出すときは加工するときだけと決めて、これを厳守するようにしてください。