生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第16回 価値を高めていない行為2】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。これからこの「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
16回目の今回は、「価値を高めていない行為」についての第二回目です。前回のコラムでは、「価値を高めていない行為」を再確認いたしました。ここでは、ある工場での事例を紹介いたします。
ある工場での事例
ある工場では、第1工程から第3工程まで、順番に製品が流れていきます。
第1工程は設備が加工しますが、材料を投入するのは人手で行われていました。そこで加工されたものが次の第2工程に流れていきます。2つの工程は、ベルトコンベアでつながれていました。第2工程のすぐ後には第3工程がありますが、これは機械だけで加工します。
作業が遅れる理由は?
ところがこの機械の調子が悪く、しばしば止まってしまいます。そばには第2工程の作業者がいるので、すぐに気が付いて設備を調整します。そうすると再び動き出します。この機械調整作業を第2工程の作業者がしなくてはならないので、どうしてもスピードが遅くなります。自分の作業エリアを離れて作業をしているからです。
そうすると第1工程から流れてくる製品が、ベルトコンベアの上に溜まってしまいます。第1工程の作業者は製品が流れていかないので、加工をすることができません。
ペース調整を始めてさらにパフォーマンスが落ちる
そうするとどういうことが起きるかというと、第1工程の作業者がペース調整を始めるのです。さらに後ろの工程の様子を確認するために、しばしば第2工程まで行って状況を把握します。第2工程の状況を知らずにどんどん加工すると、ベルトコンベアが一杯になって最後には落下してしまうからです。
そのようなことを行うわけですから、第1工程のパフォーマンスは当然落ちてきます。仮に、第2工程以降が調子が良くても、様子を見に行くことを止めません。なぜなら状況が分からないからです。そうすると逆に第2工程に待ちが生じてしまいます。
ロスをなくすには?
この場合、様子を見に行くことをやめて、モニターの取り付けと、ブザーによる合図、製品のバッファゾーンを設けることでロスを無くすことができました。
半ば習慣化している価値を生まない行為は、それをムダであると認識して、改善によりなくすことが必要です。