生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第25回 手作業の生産性】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
25回目の今回は、「手作業の生産性」についてです。
生産性を高める2つの方法
手作業の生産性を高めるのは、2つの方法があります。それは、「作業スピードをあげること」と「ムダを取り除いた最適作業にすること」です。
「作業スピード」は“習熟”する
「作業スピード」は、各自が持って生まれたペースとでもいうべき、基礎的な動作のスピードがあります。これは訓練によって向上させることができます。いわゆる“習熟”です。これにより作業のスピードは相当あがります。ただし、ある一定を超えるとだんだん習熟効果は減少し、最後はある一定のスピードに落ち着くようです。
「作業スピード」は時間によって変わる
同じ人でも時間によってスピードは変わります。例えば、朝と夕方では微妙に異なりますし、体調やそのほかのいろいろな条件で変わってくるのです。
また、作業開始してからしばらくするとペースが上がります。それはリズムができるから。したがって、繰り返し性の高い作業ほどスピードが速くなり安定します。
縫製工場での熟練した作業者の事例
例えば縫製工場は、典型的な労働集約型で、自動化がなかなかできない世界です。熟練した作業者がミシンをかけるスピードは、目を見張るものがあります。芸術的ともいえるほどの、速さと正確性。同じ作業を繰り返しているので、究極とも言えるスピードで作業できるのです。またリズムができているので、流れるような作業になります。
生産性の高い縫製工場では、作業場所やボビンやはさみなどの位置も研究されていて、作業にムダがほとんどありません。生地を掴む位置や、縫い終わったものを次のミシンへ送る位置まで決まっていて、最適作業を徹底的に追及した結果であると感心させられます。
手作業は改善の余地が多い
手作業は手や足、身体の動きを研究することで、モノの配置や高さなどを改善する余地がたくさんあります。ビデオを駆使して何度も画像を見ながら検討することで、最適作業を設計することができます。