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JEMCO通信

2013-12-18 海外のコンサルの現場から

■ グローバル展開の現場から|海外生産する時の注意点|第五回現地化の重要性|人の現地化(その1)

文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 高橋功吉

 

前回は、海外事業を成功させるポイントは、現地事情を理解し、それを踏まえて、どう「現地化」するかにあるということで、「企画・開発、品質評価の現地化」の必要性について述べた。今回は、「人の現地化」ついて述べる。

◆出向者の現地化

 先ず、人の現地化という点では、出向者が現地事情をどれだけ理解できているかが現地で仕事をする上で重要なポイントになる。その国の国民性、文化や宗教等への理解が無ければその国での常識が無いということになってしまうばかりか、それがために大きなトラブルに発展することもある。先日、タイのある拠点で、日本人出向者が、人事異動に関する説明をするのに、王様を引用して説明をした。説明の仕方の悪さもあり、これが不敬発言だとして、従業員から残業拒否、さらには、ストライキに入るということにまで発展した。最終、その出向者を帰任させることで収拾せざるをえなくなったのだが、その国の文化や習慣、ベースとなる考え方がわかっていないと、その国では許されない発言をしてしまい、このような事態を招くことにもなる。先ずは、その国で仕事をさせていただく以上、その国の文化や宗教を尊び、それを踏まえたオペレーションをしない限り、現地に根ざした経営はできないということだ。

 

◆経営の現地化・・・ローカルのやる気と定着視点でも重要 

経営の現地化の一つの目的はコストである。日本人出向者の人件費は高い。現地給のみならず、日本国内給、また、海外での住居費や移動手段としての車代等、日本での人件費よりはるかに高い負担となる。合算課税なので、これらは海外会社が負担しなければならない。実際、ある赤字に陥っていた中国の日系企業では、出向者の半分を帰任させたら、すぐに黒字化したという例もある。また、ローカル企業とのコスト競争という視点で見てみれば、ローカル企業には出向者はいない。そことの競争を考えれば、多くの日本人出向者がいたのでは、コスト競争に勝てるはずがないのは自明の理だ。コスト力という点からも現地化を図り、日本からの出向者がいなくても事業運営ができるようにすることが大切なのだ。

 

また、開発の現地化の必要性は前回述べた通りだが、ローカル企業への販売拡大を図るという点では、営業の現地化も必須である。現地が一番わかっているのは、現地のローカルメンバーであり、最終商品へのニーズも、また、そのためにどんな部材を開発すべきか、また、どう売り込むべきかもローカルメンバーの方がよほど詳しい。営業の基本についての教育と育成ができていれば、現地事情がわからない日本人より、よほど、適切な提案営業ができるはずだ。2年前のタイで発生した洪水は、タイ国内だけではなく、日本も含めてサプライチェーン全体に多大の影響が発生した。この時、復興に向け、金型や治具、サーバーなどの搬出作業等は、ローカルメンバーが中心となってボートや潜水夫を手配して搬出した企業がほとんどだ。日本人出向者はどうしたらいいかと困惑するばかりで、どこにどう手配すればよいかもわからないという中で、ローカル人材の活躍はすばらしいものだった。
これらのことからもわかるように、その国でオペレーションする以上、現地化の推進が必須であり、そのための人材育成が重要ということなのだ。併せて、経営幹部へのローカル人材の登用は、ローカルのやる気につながり、キーパーソンの離職を抑制するという点でも極めて有効といえる。

 

◆ローカル人材の育成は出向者の役割 

経営の現地化を図るためには、ローカル人材の育成が重要であり、それは出向者の大きな役割である。ところが、ローカル人材の育成が計画的に行なえていないケースが極めて多い。また、出向者の中には、そのことへの意識が薄いというケースもある。従って、先ずは、ローカル人材の育成は、出向者の責任ということを明示すると共に、「人の現地化計画」を策定して推進するということは有効な方法と言える。人の育成には時間がかかる。計画的な育成取り組みが必要不可欠なのだが、出向者の任期は3年から5年という会社が多く、出向者が交代した途端、人材育成がストップしてしまうケースも多いだけに、「現地化計画」を策定し、キー人材の計画的な育成を図ると共に、その進捗確認を、グローバル本社機能の中に入れておくことは有効な方法の一つと言える。出向者の交代時の引き継ぎ事項には、現地化計画の推進状況と、今後取り組むべき必要事項が明記され、人の育成についても、きちんと引き継がれることが大切ということだ。

 

ところで、現地化計画を策定したものの、具体的にどのようにしてローカル人材の育成を図っていくと良いだろうか。

 

次回は、このローカル人材の育成方法の一例と、人材育成を担う出向者人材の育成について述べることにする。 

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