【注目の商品~商品開発の現場から~】
工場の“厄介者”を環境に配慮した「防草材」に
「路盤材」という新たな用途への取り組みも実施
三菱製紙株式会社八戸工場様
工場の“厄介者”を環境に配慮した「防草材」に
「路盤材」という新たな用途への取り組みも実施
三菱製紙株式会社八戸工場様
Contents 01
創業以来、長きにわたり様々な印刷用紙を製造している三菱製紙株式会社八戸工場。
その製造過程で新たに生まれた商品があります。それが「リグローブ」。工場のボイラー焼却灰を原料にした防草材です。「撒く・敷く・ならす」の簡単ステップで雑草を防ぐことを可能にし、エコマークも取得している環境に優しい商品です。現在ジェムコ日本経営(以下、ジェムコ)は、このリグローブについてコンサルティングを実施、新たな可能性を見出す取り組みを共に行わせていただいています。
では、リグローブは具体的にどんな商品なのでしょうか? 三菱製紙株式会社 八戸工場 企画管理部長 石川裕之氏と、環境管理グループ 中村悦朗氏にお話をお伺いいたしました。
三菱製紙株式会社 八戸工場 企画管理部長 石川裕之氏(写真右)、環境管理グループ 中村悦朗氏
Contents 02
石川:製紙工場は365日、24時間稼働しています。そのため、工場のエネルギー源として、ボイラーで燃料を燃やすことで多くの焼却灰ができ続けています。灰は、工場の中では“厄介者”。量も多いですし、黒く見栄えがいいものではありません。細かいので飛び散りやすく、処分するにはお金がかかります。しかしこの灰にも、上手く使えば有効利用できるような特性もありました。そこで「この厄介者から商品ができないだろうか?」ということを考え始めるようになりました。
中村:弊社での開発が始まったのは10数年前からです。その中で考えられた用途の一つが「防草材」です。
石川:開発するときに「環境に配慮した商品を作り出す」ということをコンセプトとして考えていました。いくつか案が出てくる中で、防草材として開発することになったのは、草刈りは重労働で負担が大きいということ。刈っても刈ってもまた生えてきますし、少子高齢化でさらに大変になるのではないかという思いもありました。誰かに作業をお願いするとしても、結構費用もかかります。
その後、本格的に防草材の開発に取り掛かり「リグローブ」が誕生しました。公益財団法人日本環境協会からエコマーク商品認定を受けるなど、当初の考えの通り、環境保全に役立つ商品として生み出しました。
Contents 03
中村:リグローブは、表面にたくさんの穴が開いている「多孔質」と呼ばれるもので、形状は球体。砂からパチンコ玉程度の大きさのものが混ざっています。
これらは体積に対して30%くらい吸水するという性質をもっています。例えば穴を掘って、そこにリグローブを入れると、雨が降っても水たまりにはなりません。リグローブが吸水するからです。そして吸収した水は蒸発し、また新たな水を吸収します。
リグローブを敷き詰めると雑草が生えるのを妨げることができるのは、地面に水分がいき届きにくくなるから。地面に雑草の根があったとしても、雨などの上からの水はほぼリグローブが吸収してしまうので、地面に雑草が生えるのに必要な水分を与えない。雑草類の根からの吸水を抑制し、成長を阻害します。
Contents 04
中村:リブローブの施工方法も簡単です。防草したい部分に、下記の3ステップを行うことで完了します。
①草を刈る
②地面に10~15センチくらいリグローブを撒いて敷き詰める
③軽く上から踏みならす
通常防草は材料費のほかに、施工するための時間や工事費がかかりますが、リグローブは上記の簡単なステップで完了するので、トータルコストが安く抑えられます。
リグローブの出荷時の様子
広いスペースでの施工時は、トラックなども活用して行われます
Contents 05
中村:雑草が根から水分を吸収する前にリグローブが吸収するので、施工直後から雑草類の生育を抑えます。一般的な雑草に対しては、効果を感じてもらいやすいと思います。
継続期間としては、数年間。ただ、1年半くらいすると、リグローブの上に雑草の種が飛んできてしまい、そこから雑草が生えることがあります。その時はそれを抜いてあげる必要はありますが、地面に残っていた根から生えてくるわけではありません。リグローブの上に生えてきたものを抜くのは簡単ですし、その作業をすることで効果は長持ちします。
Contents 06
石川:また、リグローブは様々な場所で使っていただけます。今は、ホームセンター等での個別販売ではなく、企業様を中心に販売させていただき、マンション等の管理地から、工場や倉庫等の広範囲な土地まで、様々な場所にご利用いただいています。
特に、倉庫やグラウンドの周辺など、草が生えたとしてもなかなか刈りにくいところにリグローブを施工しておくというのは有効だと思っています。
最近だと、例えばソーラーパネルが広い敷地に敷き詰められている光景をご覧になられることもあるかと思います。一度ソーラーパネルが設置された場所というのは、なかなか人が近づかないですから、雑草が生え放題になってしまっていることもあるようです。例えば、日本全国のそのような場所でリグローブを敷き詰めると一気に草刈りの労力が少なくなる、という効果が期待できると思います。
ソーラーパネル下への施工から1年半後の様子。リグローブが敷き詰められたところには、周辺と比べ雑草は見受けられない
Contents 07
ジェムコでは、このリグローブについてコンサルティングを実施。新たな可能性を見出す取り組みを共に行わせていただいています。なぜ、ジェムコにご依頼いただくことになったのか、どのような取り組みを行っているのか、今後の展開などについてもお話をお聞きしました。
石川:防草材としていくら皆様に使っていただいても、灰は常にできるということもあり、防草材の利用以外の新たな用途を考えていました。自社の中でプロジェクトを組んで検討していましたが、なかなか埒が明かない。そこでジェムコさんにコンサルティングをお願いすることになり、販路の拡大と新たな用途を見出すというところを中心に検討していきました。
ジェムコさんには「商品価値を作り出す」ということはもちろん、「プロモーションの仕方」など、様々なアドバイスをいただいています。ジェムコさんのコンサルティングを受けたことで、これまでも自分たちだけでできていると思っていたことが、実際はなかなかできていなかったということを痛感しました。
アドバイスをいただきながらいろいろと検討していく中で、新しい用途として「道路の下の材料などに使われる『路盤材』として、リグローブの展開を検討してみよう」ということになりました。これは、かなり今後の展開に期待をしているところです。防草材としては、場所によっては「効果はあるけど、黒い色が気になる」というところもあったかと思うのですが、路盤材としてならば色は気になりません。よりよさを感じていただきやすいのではないかと思います。
実際に今では、路盤材としての活用も始まっており、例えば下記のように、駐車場の施工時にお使いいただいたりもしています。
中村:もともと開発の段階から、路盤材として使用することは考えていました。しかし、なかなか展開できていませんでした。
道路を作る時、一般的に砕石で作ると出来上がりが重くなってしまいます。例えば、地面がとても柔らかい土地に道路を作る場合、その方法だと地盤が弱いところに重いものを置くということになり、地盤沈下が起こることも考えられます。リグローブは、比重がとても軽く、砂の1/3くらいなんです。そのため、リブローグを使って作る場合、地盤沈下がしにくいということが考えられます。
青森もそうなのですが、寒い地域だと、冬場に地面が凍って穴が開くことがあります。その他にも、よく古くなった下水管の工事をしていることもあるかと思います。そのような補修の際にも使っていただけるのではないかと思います。
石川:“地産地消”ではありませんが、青森県内でこのリグローブを有効利用できるようにしていくことも考えています。
青森県内の工場で生まれた灰を加工することで、県内で有効物として使っていただけるような、地元に根差した展開も考えていきたいですね。
路盤材施工例。 駐車場施工時で下層にリグローブを30cm施工
散水、転圧後、 上層に砕石20cm施工し転圧し完成