【注目の商品~商品開発の現場から~】
建物の中に入らない! 消防士の安全を確保して消火を可能に
「cobra」が目指す日本の新たな消火活動とは?
三井造船特機エンジニアリング株式会社様
建物の中に入らない! 消防士の安全を確保して消火を可能に
「cobra」が目指す日本の新たな消火活動とは?
三井造船特機エンジニアリング株式会社様
Contents 01
長年の造船業で培った技術で、特殊機械や大型機械の設計・製造からメンテナンスまで、トータルで現場を支える、三井造船特機エンジニアリング株式会社。現在ジェムコ日本経営(以下、ジェムコ)がコンサルティングを行い、進行しているのが「新規事業開発コンサルティング」です。「同社シーズを活用できる新規事業テーマを探索し、事業化のための戦略策定を支援しています」と、ジェムコのコンサルタントの森岡琢は言います。その活動が行われている中で新規事業のテーマとして挙がってきているのが「Coldcut™️ cobra(以下、cobra)」を活用した事業。
同社はこれまで付加価値の高い海外製品を多く取り扱い、主に海上自衛隊向けに納入、取付からメンテナンスまで一貫したサービスを展開しています。 スウェーデン製のcobraは、日本における救助・消防市場において画期的な装置となりうる製品であり、同社が培ってきた技術・メンテナンス体制を展開することにより、海上自衛隊や消防署をはじめ多くのフィールドで社会に貢献できるものです。
cobraとはいったいどんな商品なのか、特機事業部長補佐の本田健一氏と、田邉史将氏にお話をお聞きしました。
特機事業部長補佐の本田健一氏(写真左)と、田邉史将氏(同右)
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田邉氏:消火活動に使用する、いわゆるウォータージェットですが、cobraはそこに研磨剤を添加。300barの高圧力と研磨剤によって、壁などあらゆる建築用資材を貫通させることができます。建物内に入ることなく、中に向けて微細な水霧を打ち込むことができるので、安全で効率的な消火を可能に。スウェーデンで生まれた商品で、現在スウェーデン海軍や消防をはじめ、世界各国で消火活動に使用されています。
本田氏:建物外部の安全な位置から消火活動ができるということは、消防士の安全のためにも重要なことだと思っています。
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田邉氏:建物内火災は、室内に入って直接放水しないといけないことがほとんど。その際に、建物のドアの開閉などで室内に酸素が送り込まれ「火勢拡大」の危険があります。また、発生した煙などによる視界不良で消防士が「遭難」することも起こります。その他に「建物崩落」の危険、高温環境に入ることの「健康被害」などもあり、これらのリスクは燃えている建物の中に侵入するということで起こるわけですから、cobraを使用することは、リスクの回避につながります。
本田氏:cobraは消火だけではなく、火勢を弱めて人が入れる状態にすることができるということもポイントです。室内の温度を急激に下げる能力がとても高く、500度以上の室内を1分程度で100度以下に下げることが可能です。そしてもう一つ特徴的なのは「少ない水で効果がある」ということです。
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本田氏:大量の水を使用し、長時間消火活動をすると水損が大きくなります。マンションでは、下の階に水が漏れることも多々あります。cobraは少量の水を水霧に変え効果的に消火活動するので、水で家や家具などを傷めるリスク、火災現場で発生した物質を含む水を地下水やほかの水系に流出させるリスクが少なくなります。環境への負担を減らすことにもつながるのです。
大量の水が不要ということは、消防車のタンクを小さくすることを可能にします。そうすると小さい車で狭い場所での消火活動もしやすくなる。実際にヨーロッパなどでは、小さい消防車にCobraが搭載され活躍していたりもします。
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田邉氏:体積に比べて非常に大きな表面積を持つ水霧によるものです。表面積が大きければそれだけ素早く熱を吸収できます。現在消防で使われている通常のノズルから散布される水滴の総表面積は、サッカーゴール1つ分、それに対しcobraから散布される水滴の総表面積はサッカーコート1面分になると言われています。
またcobraの場合、水霧が速い速度であることも冷却能力を高める重要なポイント。さらに、水霧が非常に大きな運動量を持って遠くまで届き、噴射された区画内に乱流を起こします。入り組んだ部分にもしっかりと水霧が到達、部屋全体を短時間で冷却させます。
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田邉氏:そうではありません。今までやっていた消火活動の中にcobraをプラスすることで「cobraメソッド」が可能になります。「安全で効率的な消火活動」を目指し、安全性を向上させてリスクを極限まで低下させる、様々な戦術ができるようになっています。
海外では、10年程度使用されているので、その間に培われた様々なメソッドが蓄積されています。日本と海外での火災は、住宅事情など違う部分もありますが、共通点も多い。それを有効活用できるのはメリットだと思います。今後は、さらにこれを発展させ「日本版cobraメソッド」を作成していく予定です。
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本田氏:消火活動を行う、様々な場所で効果を発揮できると思います。消防署はもちろんですが、例えば自衛隊、自前の消防組織を持っている工場・コンビナート、発電所などの施設などでも活躍の場があると考えています。密閉した空間や、重要な情報があるところで火を食い止めたいとき、cobraメソッドを使えば様々な方法で対応が可能です。
その優位性は、実際に使用したり、見ていただくことでよりご理解いただけると思っているので、そのためにも各所でデモなどを行っていく予定です。消防士さんの安全確保のためにも消防署に1台ずつcobraがある、ということになれば、日本の消火活動も大きく変わるのではないかと思っています。
三井造船特機エンジニアリングHP
Contents 08
造船業からスタートした同社は、近年5社が合併。造船以外の分野にもフィールドを展開しています。そのような中で、なぜジェムコに「新規事業開発コンサルティング」を依頼することになったのでしょうか? 今回のプロジェクトの担当である総務部次長の黒木聡氏に聞きました。
「次の中期経営計画を見据え、『さらなる進化のために、各企業で展開していた事業をもとに、シナジーを起こし、付加価値が生み出せるような新商品開発はできないだろうか』という意見が出てきました。実際に進めるにあたっては、合併直後ということもあり、客観的な立場でアドバイスをいただく方に入っていただいたほうがいいのではないかと考えていました。私たちだけだと、造船関係の知見が中心になってしまうことを懸念していたからです。私たちにはこれまで培ってきたたくさんの技術がある。それらを、業種・業界を超えて転用することはできないだろうか。自分たちでは新しいと思っていることも、実はもうすでにあるものではないだろうか…。そういうところも踏まえて、様々な知見を持ったコンサルタントの方に、自分たちだけでは気づかないようなところをアドバイスいただければと思い、ジェムコさんにコンサルティングをお願いすることになりました」
コンサルティングは、下記のような流れで行われています。
STEP1:シーズ分析編
□保有技術・資産・能力の棚卸や評価
STEP2:シーズ分析編
□新規事業検討領域の市場・製品・技術ニーズ検索
□新規事業テーマの構想
STEP3:事業化戦略策定編
□新規事業領域の市場構造分析
□受容性調査
□参入障壁分析
□新規事業のKSF特定と獲得方法の検討
□事業化戦略・事業計画書の策定
コンサルティングは2019年4月にスタートし、現在順調にステップを進めています。「その中で、新規事業のテーマとして出ているのが、今回ご紹介しているcobraになります。ここまでの取り組みでも、すでにコンサルティングの効果を感じています。引き続き、ジェムコさんにはご指導をいただきたいと思っています」(黒木氏)。