オフィス移転プロジェクトにファシリテーターとしてジェムコ日本経営が参加
ABWという“魔法の言葉”をキーワードに
社員一丸となって進めた「働き方改革」
株式会社QUICK様
ABWという“魔法の言葉”をキーワードに
社員一丸となって進めた「働き方改革」
株式会社QUICK様
Contents 01
日本経済新聞社グループの金融情報サービス会社である、株式会社QUICK。2017年7月に本社の半分が、現在の「共創スペース日本橋」に移転することが決定しました。移転にあたり、オフィス設計の委託先として、株式会社オカムラが選定され、「働き方改革の推進」「フリーアドレスの導入」の2つの達成を目指す、オフィス移転プロジェクトが進んでいきました。その中で、「なぜフリーアドレス?」という不安払拭に有効だったのがワークショップ。ファシリテーターとしてジェムコ日本経営も参加しました。2つの目的達成も実現し、成功を収めた今回のプロジェクトの取り組みについてお聞きしました。
写真左から) オカムラ ワークスタイルソリューション部 クリエイティブディレクター 奥出雄一氏
QUICK ひとづくり本部 総務・ファシリティグループ シニア・アドバイザー 長岡一郎氏
ジェムコ日本経営 コンサルタント 大西徹
Contents 02
長岡氏:オフィス移転とともに決まったことが2つあります。それは、「働き方改革の推進」「フリーアドレスの導入」です。この2つを推進するために「QUICK Smart Workプロジェクト」が、合わせて移転を具体的に進めるための「オフィス移転プロジェクト」が立ち上がりました。今回のオフィス移転は単なる移転ではなく、働き方改革を具現化するというもの。私はオフィス移転プロジェクトメンバー兼事務局責任者という立場で関わることになりました。
オフィス移転プロジェクトの最初の取り組みとして、オフィス設計をオカムラさんにお願いすることを決め、そのあと主に副本部長以上で構成されたプロジェクトメンバーで基本コンセプトをまとめ、全社員に発表をしました。
奥出氏:今回の移転の対象となったのがシステム部門の皆さんだったということもあり、当初、「フリーアドレスにする必要があるのか?」という意見も少なくありませんでしたね。
長岡氏:そのような中で、現場をどのように巻き込んでいくかは大きな課題でした。解決のために下記の4つを考え実行することに。ワークショップについては、ジェムコ日本経営さんにもお手伝いをいただくことになりました。
①ワークショップの開催
②社内説明会
③ポータルサイトの活用
④パイロット什器を入れる
Contents 03
長岡氏:基本コンセプトを決めた後は、各部から代表者を選出。まずは2つのワークショップを開催しました。
1つめは、オフィスレイアウト決定のための、「基本要件洗い出しのワークショップ」。最初はネガティブな意見もありました。
大西氏:当時、「システム部門のフリーアドレスは上手くいかない」という情報がネット上などに流れていたことも一因だったと思います。でも、実際には上手くいっている事例は多い。最初に「フリーアドレスって何だろう?」ということを、海外も含めた成功事例とともにお話させてもらいました。
奥出氏:ここで、「フリーアドレス」から「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」という言葉にワードチェンジしました。
長岡氏:私自身の“魔法の言葉”にもなりました
奥出氏:ABWは簡単にいうと、仕事の内容に合わせて働く場所を選ぶ働き方。フリーアドレスというと働く環境のことだけになりがちですが、ABWはそれも含めた“働き方”のこと。例えば、集中する作業は静かな場所で、打ち合わせはオープンスペースで、というように、業務の内容に合わせフレキシブルに場所を選んで働くという考え方です。
そもそもQUICKさんのフリーアドレスには、キーワードとして「自ら選ぶ」ということがありました。ですからABWというほうが、一人ひとりに“腹落ち”しやすいのではないかと思っていました。オフィス移転のキーワードになりましたね。
長岡氏:ABWという言葉は、私自身にとってもわかりやすく、説明しやすい言葉だったので、様々な場面で使いました。少しずつメンバーの中に考え方が浸透していったと思います。
そのうえで、「今の姿」と「これからあるべき姿」についてチームごとに考え、まとめていきました。これは、「一日のうちに集中する時間はこれくらいある、なら集中席はこれくらい用意する」というように、集中席をはじめオープンミーティング席、リフレッシュスペースなど、フレキシブルな働き方をサポートするオフィス作りの構築に役立ちました。
また、1日の理想の業務配分について円グラフを描いてもらうこともしましたね。上手く時間を活用することで、空き時間ができれば時短にもつながるし、クリエイティブな仕事をする時間に充てることもできる。そういう考えもオフィス作りの参考になったと思います。
大西:ワークショップの場合、自分の言葉で書いたり話したりしてもらう中で、言葉に気持ちが乗っかってきて意識が変わってくるんですよね。
長岡氏:大西さんは大変場慣れをしていらっしゃるので(笑)、上手くワークショップを盛り上げていただきました。
もう一つワークショップを行ったのですが、それは「オフィスの運用要件を決めるワークショップ」。レイアウトが決まっても、その利用方法やルールが必要になります。使い方の目安のようなものを作っていきました。
大西:上の方が決めたルールであれば、使うときにモチベーションが下がるのではないかと思っていました。「参画した」という意識を作る、ということが今回重要なこと。大変でしたが(笑)、非常に有意義なワークショップになりましたね。
長岡氏:レイアウトもルールもそれぞれの目的があり、それを達成することが一番重要です。しかし、その場を盛り上げそこに参画している意識を持ち、自ら考える土壌を作ることも重要と思っていたので、ありがたかったですね。
QUICK 長岡氏
Contents 04
長岡氏:ワークショップはもちろん、いろんな形で情報発信して、全社員を巻き込むことができたのは良かったと思っています。例えばポータルサイト。ワークショップは部の代表だけだったのでそれ以外の人も参加してもらうために、ワークショップの様子をポータルサイトで発信。意見交換の場なども設けました。有効活用されていたと思います。
奥出氏:社員説明会もよかったですね。毎回プロジェクトの委員長である副社長がメッセージを出されていたのが、今回のプロジェクトの成功につながっていると感じました。ビジョンを語っていただき、それを共有するということで皆が一つになったと思います。
長岡氏:「パイロット什器」の導入はオカムラさんにご提案いただいて実行しましたが、非常に有意義でした。
奥出氏:ABWをするにあたり、私たちが什器やその使い方を押し付けても仕方がないと思っていました。ですから一回使っていただき、様々な意見をいただきました。
長岡氏:やっていなかったら、そのあと大変だっただろうなと思うことも(笑)。提案いただいたロッカーでは小さすぎると、サイズの変更をしたりしましたからね。おかげでよいオフィスになりました。
オカムラ 奥出氏
Contents 05
長岡氏:2018年7月に移転が完了しました。1か月後くらいに、移転についてのアンケートを取ったのですが、評価は上々。しかし、経営から「評価はいいけれど、フリーアドレスは形骸化していないか?」という意見が出てきました。実際、席は固定されがちでしたので、無作為で席を決める「シャッフルデー」を2回行いましたが不評でした(笑)。
そもそも、この段階で社員はフリーアドレスについては受け入れていて、「席を指定されてしまったら、“自ら働く場所を選ぶ”というABWから逆行をしませんか」というわけです。グループでの仕事が多い中で、メンバーが近くにいて仕事をすることも重要なので、同じメンバーが固まっているということは別に悪いことではない。仕事の内容などを考えたうえで、運用の仕方を再考したほうがいいのではないか、という意見もありました。
奥出氏:自分で働く場所を選んで。非常にいい働き方になっていますよね。
大西:ABWは、例えば「今日はこういう仕事の仕方、明日はこういう仕方をしたほうがいい」など、考える力を身につけることが大切だと思っています。一番働きやすい姿は業務によってちがうし、今月と来月はまた違うかもしれない。「私の担当している業務は、こういう働き方が一番いいんですよ」ということを言えるようになればいいと思います。ABWが根付いてきている証ですね。
長岡氏:あと、マネージャーの意識も変わりました。当初、「席が固定されないと管理がしにくい」という声もあったのですが、マネジメントするほうの意識や方法も変わってきたようで、今ではそのような声はあまり聞きません。
また、会議室も以前より減っています。しかし、会議や打ち合わせが減っている、というわけではありません。「会議室が空いてないならフリースペースに集まって会議をしよう」というように、スピード感を持った仕事が実現でき、働き方改革につながっていると思います。
大西:ABWという考え方は、社員が主体となって、会社が望む新しい形にチャレンジする、マインドのベースづくりになると思います。今後のいいノウハウがたくさんできたのではないでしょうか?今後、さらに発展してQUICKさんならではのABWになっていけばいいですね。
長岡氏:自社にあった形での“my ABW”を作っていけるようにしたいですね。