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Case

導入事例

【私の経歴】

座右の銘は「おもしろきなき世をおもしろく、すみなすものは心なりけり」
社員に自分に自信を持ってポジティブに生きることを伝えてきた<後編>

UBE株式会社 顧問 玉田英生氏

Contents 01

インタビュー概要

ジェムコ日本経営とゆかりのある方の半生を紐解く「私の経歴」。今回は、UBE株式会社 顧問 玉田英生氏にお話をお聞きしました。後半では、印象に残っている仕事や人材育成などについてご紹介いたします。

<略歴>
1981年4月:宇部興産株式会社(現 UBE株式会社)入社
2015年4月:執行役員 
2018年4月:常務執行役員
2021年4月:専務執行役員
2022年6月:代表取締役
2024年4月:取締役
2024年6月:顧問

Contents 02

企業立病院の立て直し
トヨタ生産方式で病院の業務の「無駄をなくす」

50歳を迎える直前には、当時55年の歴史があった、山口県宇部市にある企業立病院の立て直しに派遣されました。製造業において企業立病院は、社員の健康管理・健康維持が大きな役割。しかし、時がたつにつれ地域住民の病院というところに役割が変わっていきました。
派遣される前までは、病院についてはあまり理解できておらず、経営は安定していると思い込んでいました。しかし実態は赤字続き。UBE本体の事業部が黒字になっても、病院の赤字で損益を悪化させる事態が続くことを経営層が問題視したことで、業績改善が指示されていました。
病院は、医師、看護師、薬剤師ほか国家資格を有し、患者の命を守るという使命を全うしています。そのような使命がある中で病院内業績改善に取り組むにあたり、トヨタ生産方式の改善活動を取り入れました。トヨタ生産方式は「無駄をなくす」というという考え方で、いわゆる「カンバン方式」として有名でした。製造業に多く導入されていましたが、サービス業、特に病院に導入するケースは当時初めてに近かったと思います。
例えば、看護師にはまず万歩計をつけてもらいました。業務時間内に何歩歩いたか計測し、そのうち実際に生産に寄与した部分はどれくらいか確認していきました。「ただ歩いているだけの時間を減らしましょう」「無駄な動きを少なくしましょう」「モノを探す時間を少なくしましょう」というようなことを徹底し、無駄な時間を減らして患者さんのために当てるようにしていきました。無駄な作業をやめることで、看護師の残業も減りますし、働きやすくなることで離職する人も減りました。
職員を巻き込み、ムダを排除し、仕事を楽にすることで病院経営は次第に改善され、異動後4年目には黒字に転換。こうした業績改善の実績から、全国8か所からの講演依頼があり、雑誌、病院、看護師教育機関ほかで事例紹介を行いました。

Contents 03

忘れてはならない出来事
品質不適切行為への関わりとリスク管理

その後、UBEに役員として戻ってきましたが、記憶に鮮明にあることは2018年に判明した品質検査上の不適切行為です。本事案は、原因究明、再発防止策の実行、社内教育と信頼回復にかなりの時間を要しました。徹底した調査を行うため、外部弁護士を入れた第三者委員会を立ち上げることが決まりました。委員の候補者選定案の作成と承認を得て、第三者委員会が立ち上がり、その事務局として対応しました。
事務局は、常に第三者委員会の議事録作成と指示事項を関係者に連絡する役割でした。事案ごとに原因のヒアリング結果が委員会に報告されたのですが、次々の明らかになる品質不正事案の広がりに翻弄され、委員会の議論が深まれば深まるほど出口の見えないトンネルに入ったようでした。途中は暗澹たる気持ちになりましたが、調査報告書は約4ヶ月でまとまり、2018年6月7日に公表に至りました。本事案により、当社は顧客の信頼を失墜させ、社長が会見で謝罪しましたが、私自身コンプライアンス・チーフ・オフィサとして調査報告書の指摘にある品質保証に関する規範意識の鈍麻、コンプライアンス意識の不足について責任を痛感し、ガバナンスの重要性を再認識しました。今でも品質不適切行為の再発防止を続けています。
また、2018年に社外取締役からリスク管理の仕組みづくりを急ぐように提言を受けました。それによって2019年1月1日付けでリスク管理部を立ちあげました。会社におけるリスクは各部署で管理されているものの、一元的管理が出来ておらず、品質不適切事案もあったため、リスク管理システムの稼働と結果報告までそれから1年程度の短期間で行いました。企業として、リスク管理を見える化、体系化して対策を講じてリスクを低減する活動は大変重要であると考えています。

Contents 04

人財育成の大切さ
ダイバーシティという観点での原点は「病院での経験」

「企業は人なり」との言葉があります。人的資本の充実として、2017年から働き方改革に着手。仕事を家庭の両立を進め、年次有給休暇の取得率、男性育児休職取得率も上昇しています。2020年からはダイバーシティ、女性活躍などDEI(※)にも着手し、女性上位管理職の育成に注力しました。ダイバーシティという観点で私の原点にあるのは、病院での経験です。病院は85%が女性という職場でした。いかに性別などに関係なく、みんながやりがいをもって明るく働けるということが大切かということを学ばせてもらいました。
社員の能力を引き上げれば、その結果で企業業績が上向き、企業価値向上にもつながります。人財を育てるというのはもちろん、社員の安全管理と健康管理で労働損失をなくすことで安心、安全な職場にしていくことも重要です。そのためにも、ハラスメント対策、コンプライアンス意識の向上でガバナンスを一層高めることも重要で、コーポレート部門における役割も認識しました。

(※)DEI・・・Diversity(ダイバーシティ:多様性)、Equity(エクイティ:公平性)、Inclusion(インクルージョン:包括性)頭文字を取った言葉。組織や社会において、多様性を尊重し、すべての人を包摂的な環境で受け入れること。

Contents 05

これからのこと
「なぜ?」を深堀して納得して行動するサポートを

人財育成については今後も携わっていきたいですね。最近では「人財」「人的資本」とかよく言われます。企業にとっては「財」かもしれないけれど、「人」として見たとき、ひとりの人間としてその人のキャリア、どういう道に進んでいくのかということが重要ですよね。
また私は、最近1年間大学で学ぶ機会を得て、リベラルアーツ(一般教養)を学んできました。今現役で働かれている方は、卒業から時間が経過しているかと思うので、私のほうが大学生に近いかもしれない(笑)。そこで学んだことも生かしていきたいですね。
それは例えば、「思考方法」です。持続可能な社会、ダイバーシティとかいうけれど、「企業がなぜそれを実現しないといけないのか」というところの「なぜ?」が深堀できないまま、行動しているケースが多いのではないかと思います。よく「なぜ?」を5回繰り返す、とか言ったりもしますが、その時間がないこともあるでしょう。
世の中には「考えてみればこうだね」という現象が結構あります。皆さんが納得するところに行きつくまでにはたくさんの超えないといけない壁があります。本当に“腹おち”して納得して行動できるように、さまざまな事柄についてしっかり深堀をして伝えられたら思います。

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