これからの成長戦略の論点 第2回:いかにイノベーションに取り組むか~イノベーションとは何か?~
文責:ジェムコ日本経営 成長戦略コンサルティング事業部 事業部長 森岡 琢
■イノベーションとは何か?
成長戦略を描くうえで、イノベーションという言葉を避けて通ることはできません。
そもそも「成長」とは何でしょうか?
売上や利益を今より増やすこと、販売数量を今より増やすことといった量的な成長、今まで参入できなかった分野に参入すること、今まで開発できなかったものを開発できるようになるといった質的な成長。成長の定義は一意ではなく、その企業が何を目指し、何を実現したいかによって、定義は変わります。
どのような定義にせよ、これまでの限界を超え、自社がより持続的な存在になる、これが「成長」というものではないかと思います。そして、この「これまでの限界を超え、自社がより持続的な存在になる」ための手段が「イノベーション」であると考えています。
■イノベーションについてのよくある誤解
それではイノベーションとは一体何によってなされるのでしょうか?日本でよくある誤解(誤訳)として、イノベーション=技術革新と見なされます。つまり、技術の革新によってイノベーションが達成されるという意味合いです。
そのため長い間、日本ではイノベーションが技術の話であり、技術部門が主導するものであるとされてきました。しかし実際はそうであはありません。イノベーションを実現するのは技術によるものだけではなく、その担い手は技術部門・技術者に限定するものではなく、社会を構成するすべての人がその可能性を秘めています。
■イノベーションの提唱者
ヨーゼフ・シュンペーターという名前は昨今書籍等でも皆さんの目に触れる機会が多いのではないでしょうか。
シュンペーターこそがイノベーションの提唱者であり、その考え方は今も色褪せてはいません。
シュンペーター流に言えば、イノベーションとは「新結合」という言葉で表現されます。
非常に独特な表現ですが、小難しく言うと、生産要素を様々な組み合わせや、方法で結合し、新機軸を見出す、ということになります。
乱暴に言うと、「様々なモノ・コト・ヒトを結び付けることによる新しい発見」といったところでしょうか。
またシュンペーターはイノベーションを以下の5つに類型化しています。
・新しい財貨の生産(ビジネス/プロダクトイノベーション)
・新しい生産方法の導入(プロセスイノベーション)
・新しい販売先の開拓(マーケティングイノベーション)
・原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得(サプライチェーンイノベーション)
・新しい組織の実現(オーガニゼーションイノベーション)
「新結合」によって上記を目指そうというわけです。
ちなみに中国語でイノベーションは「創新」という漢字で表します。「新しく創る」。日本で誤解されてきた技術革新よりも、中国語の方が核心を捉えているかもしれませんね。
イノベーションとは何か?ということをだいたい理解できたかと思います。
次回はイノベーションを成長戦略にどう取り込むか、その要点について解説したいと思います。