リスクマネジメントと保険【前編】
寄稿:共立インシュアランス・ブローカーズ株式会社
皆さんは保険、なかでも「損害保険」というと何を思い浮かべるでしょうか。
プライベートな分野であれば、火災保険、自動車保険、あるいは海外旅行傷害、といったものがすぐ浮かんでくると思います。
では、企業にとっての損害保険はどうでしょうか。皆様の関係する会社が「どんなタイプの保険」を「どれぐらいの金額かけているか」、ご存知でしょうか。
企業の保険は「自分とは関係のないこと」と考えがち
借入金についてであれば、財務や企画の方なら、借入金の総額や主な借入先は多分常識でしょう。普通の社員の方々でも、有価証券報告書や会社のIR資料やら会社四季報等々、種々の資料にも取引銀行などのデータがいろいろ載っているので、ある程度はご存知でしょう。
では、生保も含めた保険のことはどうでしょうか。
保険は「自分とは関係のないこと」あるいは「保険は、健康保険・労災保険といった類であれば人事部あたり、火災保険などであれば、例えば総務部とか管財部あたりで担当している、かなり特殊な世界のこと」と考え、「そもそも自分になぜそんなことを尋ねるのか」と考える方が圧倒的に多いのではないでしょうか。おそらく経営トップの方々の意識としても、大差はないのではないかと思われます。
保険の自由化が1996年に始まって、すでに四半世紀が経ちました。それでも日々の営業活動を通じた感想としては、未だ日本の企業の大半では、上のような状況が実態であると思われます。
保険は財務部門で担当すべき業務?
では、「保険は財務部門で担当すべき業務である」と言ったら、皆さんはどうお考えになるでしょうか。
「何を言っているんだ」と驚かれるでしょうか。それとも「あたりまえじゃないか」と受け止められるでしょうか。
「保険は財務部門で担当すべき業務である」と申し上げたのは、実はあまり正しい表現とは言えません。
より正確には「企業をめぐるもろもろのリスクをどうコントロールしていくかは、会社の経営そのものと言っても良く、保険を含めたその総合的な対策については、企画ないし財務部門が深く関与すべきものである」とでも言うべきでしょうか。
「それなら分かる」という方がだいぶ増えるかもしれません。
欧米でのリスクマネジメント
欧米の会社では、会社が保有するすべてのリスクのうち、保険でカバーできるリスクについては、「リスク・マネージャー」という職種の人が、グローバルに、あるいはグループ全体にわたって、より効率的な保険の手配をまかされています。一方で、保険でカバーできないリスクや、高度の経営判断を含めたその他もろもろのリスクに対して責任を負っているのは、経営トップのほかには、CFO(Chief Financial Officer わが国の財務担当役員に相当)というのが一般的なようで、どういう形で処理をするかを含め、リスクの総合管理は彼にまかされている、ということのようです。
もし皆さんの会社が既にそういう体制になっているとしたら、かなり「リスク・マネジメントに関し意識改革が進んでいる会社」ということになると思います。
後編では具体的に「リスク・マネジメント」とはどんな仕事か解説していきます。