技術伝承・技能伝承(ナレッジマネジメント)に関する問題と対応の必要性とは?
文責:ジェムコ日本経営
特に製造業の企業幹部の方から、技術伝承・技能伝承に関する“お困りごと”として、下記のようなことをよくお聞きします。皆さんにも心当たりはないでしょうか?
技術伝承・技能伝承に関する“お困りごと”
□次世代への技術の伝承・移植が上手くできていない
□再・再々雇用の継続等、いまだに熟練技術者・従業員(ベテラン)に頼っている
□開発・設計や生産技術等、自社の技術・技能の中核を担う人材が育っていない
□品質対策が場当たり的、かつ表面的で再発が増えた
□昔では考えられないミスや事故が多い
□これまで培ってきた技術開発・ノウハウを次の製品開発・改良に活用できていない
□自社で技術や技能の伝承を行おうと進めてきたが上手くいかない
□企業としての技術力の低下が心配
□技術力維持・向上に向けた必要スキルの可視化と評価が必要
□離職防止に向けたキャリアパス(この先この企業でどんなスキルを身に着けることができるかなど)の構築が必要
技術伝承・技能伝承 “お困りごと”の背景
この背景には何があるのでしょうか?
その一つが、「社員の年齢構成の2極化」です。過去の不況による社員不採用の影響などもあり、熟練技術者・従業員(ベテラン)と若手技術者・従業員の年齢構成が大きく2極化している企業が多いのではないでしょうか。
また、団塊の世代が退職してしまい、これまで培ってきた技術・技能に対する伝承、情報の共有が不十分で、現場が弱体化しているということも考えられます。
早期に組織内に潜在する“技術”“技能”を顕在化し、技術力を向上させる必要があります。
技術伝承・技能伝承(ナレッジマネジメント)とは?
ここで少し、「そもそも技術・技能伝承とは?」ということを考えたいと思います。
技術伝承・技能伝承とは、企業内で培われた技術やノウハウを、熟練技術者・従業員(ベテラン)から若手技術者・従業員や後継者へと、マニュアルや基準類などを用いて継承していく活動のことを指します。
よく似た言葉に「ナレッジマネジメント」という言葉があります。これも、企業が持つ知識やノウハウといった「ナレッジ」を、マニュアルや基準類などを用いて組織全体で共有(組織知として)、活用することで、技術力の低下防止(技術消滅を含む)、更には新技術の開発による新製品・新規事業開発などにつなげることであり、ほぼ、同じ意味と捉えてもいいでしょう。
なぜ技術伝承・技能伝承が必要なのか?
では、なぜ、技術伝承・技能伝承が必要なのでしょうか?それには、下記のようなことが挙げられます。
□属人化の防止
特定の従業員しかできない仕事があると、その従業員が退職したり、長期の休みを取ったりした場合などに、業務が滞ってしまうリスクが高まります。技術・技能伝承を行うことで、このリスクを軽減できます。
□企業の持続的な成長
企業の競争力となる技術やノウハウを後世に引き継ぐことで、企業の持続的な成長を支えます。
□新入社員の育成
熟練技術者・従業員(ベテラン)の経験や知識・知見を直接学ぶことで、短期間で業務を習得することができます。
次回のコラムでは、「技術伝承・技能伝承の課題」について、詳しくみていきます。