“【隣の工場】での活動苦労談”(1)
文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 古谷賢一
コンサルティングを行っていると、大企業であれ中堅企業であれ、とても悩ましい状況に陥ることがあります。
このコラムでは、“隣の工場”で身近に起こった事例をモデルにして、どのように事態を打開していったのかを紹介したいと思います。
例えば、改善活動を推進しようとしても、現場があまり乗り気にならず、改善活動への逆風が吹き荒れることがあります。
「忙しいのに、改善活動をすると、さらに忙しくなる」、あるいは「改善活動って、しょせんは会社が儲かる話で、俺たちには何の得にもならない」、さらには「改善活動って、人減らしでしょう?
自分が不要になるようなことを誰が喜んでやりますか?」と言った言葉は、決して珍しいものではありません。
ここで紹介するX社も、そのような声が渦巻く悩ましい職場でした。X社は金属加工を生業としており、全国規模の大企業ではありませんが、その地域では中核的な存在の会社でした。
しかし、職人気質の従業員が多く、自分達の作業が一番だという自負もあり、改善や改革と言う言葉にはずいぶん抵抗がある職場風土でした。
同業者が競争に切磋琢磨しながらレベルアップをしているなかで、市場の厳しさを肌で感じていた社長が、工場の改善取り組みの必要性を訴えるものの、現場の反応はまさに上記のような言葉が返ってくるばかりでした。改善を得意とするコンサルタントが、社長の助っ人役を仰せつかり、最初に工場を訪問した時も同じで、社長が席を外した途端、社長批判が続出して話しあいには程遠いものでした。
しかしコンサルタントが根気よく、現場の人たちの話を聞いていると、今まで改善活動というと“おしつけの活動”ばかりであり、“自分達が苦労する事はあっても、改善で楽になることはなかった”という本音が見えてきたのです。
そこで、コンサルタントは社長と密な話し合いを持ち、従来の改善での良くない記憶を払拭させて、前向きな職場を目指すことが重要だとの合意を得たうえで、現場に対して「改善活動とは、そもそも、作業する人が楽になることだ」と言うメッセージを発信しました。作業が楽になれば、結果として作業性も高くなるからです。
“面倒な仕事は減らしましょう”、“身体に負担のかかる作業は減らしましょう”、“複雑な動作を簡単な動作に変えましょう”、そういうスローガンを掲げて、現場の人たちに実例を繰り返し体験してもらうことで、頑なだった現場の意識が変わり始め、その後、改善活動に弾みがつくようになりました。改善への道のりには時間がかかりましたが、それまで短期成果を追い求めるあまり、現場の意欲を大きく削ぎ落していたことが、この会社の反省点であったのです。