グローバル展開の現場から|海外でよくある問題と対応|第二回不正問題について(その2)
文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 高橋功吉
前回は、海外でよく発生する不正の背景と、どんな不正が発生しているか、具体的な事例を紹介した。今回は、これら不正に対する対策例を述べることにする。
◆不正防止対策
先ず、不正の防止対策としては、その国の実情にあわせ、内部統制の仕組みをどう作るかが大切ということになる。すなわち、お金が関係する取引すべてで不正が発生する可能性があるので、お金に関係する取引すべてにチェック機能が働くようにしておくことが基本となる。
◆基本は、担当部門とチェック部門を分けて責任を持たせること
例えば、発注依頼者と、発注担当者、検収の担当者が同じだったらどういうことになるだろうか。好きに発注して懐に入れても全く誰も気付かないということになる。前回の不正事例の中に示した手袋の例であれば、手袋を発注する担当と、検収する担当が同じだったので、数量等のごまかしはいくらでもできたということだ。
すなわち、先ず、担当部門(発注部門)とチェック部門(検収部門)を分け、チェック部門は不正を見逃さないということが職務と明示することが大切だ。実際に不正が発生するのは、このように、一人ですべてを扱えるようになっている場合であり、このような不正を防止するためには、担当部門とチェック部門を分けて、それぞれに責任を持たせることが大切ということだ。
お金を扱う仕事すべてを対象に、買う場合だけではなく、売る場合についても、すべてチェック機能が働くようにしておく必要がある。また、重要事項は、トップの決裁が必要ということにしておくことも大切だ。
◆複数見積もり、二社購買
取引先に親戚や親しい人がいる場合は、不正が発生しやすい。数量面での不正や架空発注は発注部門と、検収部門を分けることで防止できるが、見積もり単価そのものを上積みしたりされるとわからないケースもある。これを防止するには、基本は複数見積もりや二社購買が望ましいということになる。しかし、二社購買は発注量という点で、難しいケースも多いので、最低でも複数見積もりさせることは是非推進したい。但し、複数見積もりしても不正があるケースも多い。すなわち、うその見積もりを作成して複数見積もりしたと報告してくるケースである。この場合は、別の部門(例えば経理部門)に、それぞれの見積もり先に確認をとらせるということで、それらの見積もりが正しいものかのチェックをするということも必要だ。
◆仕組みにする
いずれにしても、疑えばキリがないということになり、それらを気にしていると不信感ばかりが募ることになりかねない。それを防ぐには、これらを仕組みとして整備しておくことが大切だ。日常の仕事として、必ず、担当部門以外にチェック部門がチェックするのが当たり前というような仕組みができれば、自ずと不正ができなくなり、不信感もなくなる。
新興国ほど、このような不正は多いが、進出時点では、このような仕組みが構築できておらず、問題が発覚してから、仕組みを作っているケースが散見される。日本の常識で考えるのではなく、不正はあるものという前提で、それを予防する手を事前に仕組みにしておき、進出時から運用するということが大切なのだ。そうすることで、貴重な人材を失うことも防ぐことができる。
◆通報制度の導入
もうひとつの不正防止策として、不正を見つけたら、通報させるという制度を導入するのも方法である。これらの導入は、国にもよるが不正に対する牽制機能として有効と言える。また、それら通報に対し、確認する体制も作っておく必要がある。
次回は、盗難対策について述べることにする。