■ 「知っているはず!やっているはず!」の落とし穴│第四回 意識改革と現状否定
文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 櫻内 康章
本コラムの前回と前々回、「管理・間接業務における改革の進みにくさには理由、要因」として「管理・間接業務で多く見られる『仕事をする人の習性』」について紹介しました。今回は、管理・間接業務の改善・改革に取り組むアプローチ方法について取り上げてみます。
管理・間接業務の改善・改革にはさまざまな角度からのアプローチがありますが、特に重要なこととして、まず「意識改革」が挙げられます。
それは、自らが気づき、認識しない限り、行動を変えることはできないからです。コスト意識、目的意識、価値志向等などの変革に取り組んでいこう、となるわけですが、その際、大きく次の二つがポイントです。
まず一つは、物事を「機能」でとらえるようにすることです。これは、ものをものとして見るのではなく、機能でとらえるものの見方、考え方をしましょう、ということです。
業務の改善・改革に取り組むには、業務というカタチではなく、業務を機能としてとらえないと、その業務の本質は見えてきません。まず、業務の目的、働きを明らかにすることが必要です。
本来、業務には付加価値が求められます。利益に貢献する、つまり究極的には儲けにつながることが求められていることを、私たちは知らなければなりません。
もう一つは「現状否定」の発想を持つ、ということです。
今日、管理・間接業務も高度化しています。当然、いろいろな問題、課題の解決は図られていますが、どちらかというと対症療法的な対応が多く、問題の本質をとらえての解決にはなっていない、というのも実情のようです。
変化・改革が求められている時代にあっては、従来のやり方、しくみ、制度などは、もはや通用しません。むしろ阻害要因になりかねません。ですから、これらを一旦捨てて、ゼロにリセットする必要があるのです。
つまり、現状否定から入ることが重要となるのです。
では、一つ目の「『機能』で見る、とらえる」ということについて考えてみましょう。
●私たちは仕事をして給料をもらっているのではない!
これはいったい、どういうことでしょうか?
では、何に対して報酬(給料)が支払われているのでしょうか?
それを明らかにするには、原点に返って考えてみる必要があります。そもそも何のために仕事をしているのでしょう。その目的は何でしょう。
いま行っている業務の本質は何でしょうか?
業務の本質を明らかにするには、先ほど述べた「意識改革」が不可欠となります。そのために「ものの見方・考え方、発想を変える」のですが、そもそも、業務の本質とはどういうことでしょうか?
極論しますと「業務そのもの自体は無価値」ともいえるのです。では、本当の価値とは、どういうことでしょうか?
私たちが給料をもらう対象は、仕事というカタチではなく、その仕事、業務が果たす機能であり、そこから得られる効用や満足、発揮される価値といったことに対してです。それらに対して給料をもらっているわけです。
業務の機能とは、その業務や業務システムの果たす使命・存在意義・役割をいいます。使命や存在意義はいわゆる「目的」であり、役割は「働き」を意味します。
機能とは、「目的」と「働き」の双方をいいます。
・目的:目指すところの事象を果たすための、その存在理由 をいい、
・働き:その目的を果たすための手段の抽象化・特有の性質 をいいます。
ですから、「何に対して給料をもらえているのか?」を考えることは、つまり、仕事、業務を「機能」でとらえることで、業務の本質を明らかにすることです。
従って、業務改善、改革に取り組むには、業務を「機能」でとらえることが不可欠となるわけです。
このように考えてみると、例えば時間をかけてどんなに立派な資料、報告書を作っても、目的がない、機能を果たしていないのであれば、極論すればその業務の価値はゼロであり、業務改善においては、ヤメル対象の業務であると理解すべきでしょう。
意識改革について、もう一つの「現状否定」の必要性、重要性については、次回紹介します。
今回ご紹介した内容はWebアカデミーで取り上げています。詳細については以下のサイトでご覧いただけます。
http://web.tac-school.co.jp/cfo/course/cpd_043.html