技術伝承を加速させるために│3.テクニカルナレッジエンジニアの育成と資格認定制度
文責:ジェムコ日本経営 常務取締役 コンサルタント 北井好
日本の製造業の現場では過去から培われた技術が伝承されないまま空洞化する危険性が散見され始めています。
この問題に対してどう取り組んでいけばよいか、第3回目(最終回)に入ります。
第2回目で技術伝承を加速させるには、正確に技術をまとめ上げることがまず必要であり、
そのためには三つの能力要件(管理技術)が重要になる、というお話をしました。
「技術を正確に引き出す」技術、「技術を正確に表現する」技術、「技術を正確に伝える」技術ですが、
これらは人に帰属する性格のものであり、これらの技術を体得した人が核となって技術の伝承を加速推進させる必要があります。
ただここで問題になることがあります。
これらの技術を体得しているといっても、その人がどのレベルにあるのかその客観的評価ができていないと、
「技術を正確に引き出す」段階での活動が難しい状況に置かれる場合があります。
というのは、技術ノウハウを持っているのはベテラン、引き出す人はその後輩、となれば立場上のことを考えればスムーズにいかない場合が想定されます。
我々外部の者であるコンサルタントがベテランから聞き出す場合ですら、最初は険悪なムードになることがあり、
同じ会社の先輩・後輩という関係ではなおさら、という状況が考えられます。
そこで、この三つの能力要件を身に付けた人を育成し、これを客観的に評価しその能力レベルに応じた資格認定を行う、
「テクニカルナレッジエンジニア資格認定制度」をこの度創り上げました。
この認定制度の狙いは、広く世の中の人がこれを認め、この資格を持った人が、帰属する会社においても認知され、
年齢・経験関係なく技術伝承の活動に邁進できる状況を創り上げることにあります。
これにより日本全体の製造業での技術の空洞化に歯止めをかけようという壮大な想いもあります。
なお指導育成の形態としては、特定企業に入り技術の見える化活動をプロジェクト推進することにより関わったメンバーを育成する「プロジェクト型」、
特定企業に入り具体的テーマを取り上げ実践研修を行う「ワークショップ型」、
テキストをもとに行う「公開研修型」がありますが、
「プロジェクト型」「ワークショップ型」が資格認定の対象になります。
「技術伝承を加速させるために」をテーマに、
(第1回)なぜ技術伝承が進まない
(第2回)技術伝承にブレーキをかける三つの壁の克服
(第3回)テクニカルナレッジエンジニアの育成と資格認定制度、をお話ししました。
技術伝承は、プロジェクト型で進めていくのが確実ですが、資格というトリガーを活用し、技術を見える化し、残し、発展させる人材育成から始めるのも得策の一つと考えています。各社さま、まずはまずは、ワークショップからお試しで着手みてはいかがでしょうか?
了