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JEMCO通信

2020-12-11 暗黙知を形式知に ナレッジマネジメント

技術伝承を加速させるために

文責:ジェムコ日本経営 常務理事 コンサルタント 北井好

①なぜ、技術伝承が進まない

人間社会が進化したのは、知恵と経験の蓄積、伝承、そしてそれを理論化し普遍化していく志向、すなわち技術として共有化したからである。現在、製造業各社の経営幹部の方の悩みのひとつは、『技術伝承が進まない』である。

その第1の原因は、ノウハウを持つベテランから「どう技術を正確に引き出すか」であり、せっかく聞き出した技術ノウハウを「どう技術を正確に表現するか」が第2の壁である。第3の壁は、その技術ノウハウを「どう技術を正確に伝えるか」である。技術進化が激しい場合、ノウハウが技術として確立されたものなのか、あるいは失敗の経験レベルか、それを峻別して伝えることが必要である。そして、その失敗の経験レベルを技術に昇華していく日々の努力が重要である。

②技術伝承にブレーキをかける三つの壁の克服

三つの壁(「どう技術を正確に引き出すか」「どう技術を正確に表現するか」「どう技術を正確に伝えるか」)を克服するために、組織の変更やシステム構築の検討もあるが、これは必要条件であり、十分条件ではない。技術をまとめ上げる能力を持った人が必要であり、その能力を身につけるためには、能力を理論化・普遍化し、管理技術(能力要件を細分化し、一般化する)として理解し、訓練で体得する必要がある。

一つ目の技術、「技術を正確に引き出す」ポイントは、根拠を徹底的に明らかにし、その科学的裏付けを見抜くことである。

二つ目の技術、「技術を正確に表現する」ポイントは、VE※の機能的考え方をベースに目的表現・能動的表現を取ることである。

三つ目の技術、「技術を正確に伝える」ポイントは、技術として確立されたものと経験上の知見レベルのものを明確に分けて伝えることである。

所見を述べると、世の中では、技術伝承を人工知能(AI)が請け負うという話があるが、技術とは過去と未来の科学的架け橋であり、AIでは未来は創れない。

※VE(Value Engineering:価値工学)「〇〇を△△する。という表現を基本とする」

③テクニカルナレッジエンジニアの育て方と資格認定制度

技術伝承を加速させるには、正確に技術をまとめ上げる三つの能力要素(管理技術)を体得した人が核となって、加速推進させる必要がある。ただ、その技術の体得レベルの客観的評価ができないと、特に「技術を正確に引き出す」段階での活動が難しい状況になる。社内でノウハウを持つベテランから、後輩が引き出そうとした場合、三つの能力要素を持っていたとしても、上下・先輩の立場が状況を難しくすることが間々ある。

そこで、この三つの能力要素を身に着けた人を客観的に評価し、その能力レベルに応じた資格認定を行う「テクニカルナレッジエンジニア資格認定制度」を設けた。その狙いは、広く世の中の人がこれを認め、この資格を持った人が帰属する会社において認知され、年齢・経験に関係なく技術伝承の活動に邁進できる状況を創り上げることである。まだ、途中ではあるが、認定者は30名ほどとなり、さらに広めるべく、取り組んでいる。

本コラムは、2016年掲載分の改定版となります

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