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JEMCO通信

2016-05-30 暗黙知を形式知に ナレッジマネジメント

技術伝承を加速させるために│1.なぜ技術伝承が進まない?

文責:ジェムコ日本経営 常務取締役 コンサルタント 北井好

 

日本の製造業の現場では過去から培われた技術が伝承されないまま空洞化する危険性が散見され始めています。

この問題に対してどう取り組んでいけばよいか、3回に分けて述べてみたいと思います。

大仰に言えば、人間社会がここまで進化したのは知恵と経験の蓄積と伝承、そしてそれを理論化し普遍化していく志向、すなわち技術として共有化したことにあるといえます。

これを日本の製造業の現場に置き換えれば、技術の共有化と伝承が進まなければ日本の製造業に将来はないといえるでしょう。にもかかわらず、製造業各社にお邪魔して経営幹部の方とお話すると必ず出るのは「技術伝承が進まない」というお悩みです。

それではなぜ技術伝承が進まないのか、考えてみたいと思います。

各社の実態を拝見した時、まず思うのは「過去の経験の蓄積を本当に技術まで昇華させているか」ということです。

若手が先輩のやり方を見よう見まねで失敗を重ねながら一人前になっていく、ここで止まってしまえば、いわゆる暗黙知の状態のままになってしまいます。

我々コンサルタントがベテランあるいはマイスターと呼ばれる方にその方たちがお持ちの技術について具体的にヒアリングした時、よく聞く答えとして「いろいろあってね」があり、さらにしつこく聞こうとすると怒り出す、という険悪な状態になることもあります。

これではベテランの方に技術をまとめてくれとお願いしても、何をどうまとめたらよいかわからない、後輩がベテランから聞き出そうとしても一蹴されるということになってしまいます。

すなわち、「どう技術を正確に引き出すか」が最初の壁になります。

次に多く見られる実態は、意欲あるベテランの方がせっかく技術ノウハウをまとめたのに「ノウハウが理解できない」「人によって粒度が違う」という現象です。ベテランの方は技術に精通した人であり、他の人に何かを正確に伝達する訓練は日頃受けておられないのが実態ではないでしょうか。

言葉にしても文章にしても映像にしても「どう技術を正確に表現するか」これが第2の壁になります。

そして第3の壁は「どう技術を正確に伝えるか」ということです。

伝承すべきノウハウはすべてが技術として昇華できるものではありません。

トラブルが起こったとき対策を打つわけですが、その根拠が理論化できていれば技術として昇華されていることになりますが、トラブル対応集・やってはいけないこと集でとどまる場合も発生します。技術の進化が激しい場合も同様のことが起こりえます。

伝承すべきノウハウが技術として確立されたものなのか、あるいは失敗の経験レベルなのか、正しく峻別して伝えていく必要があります。

このことにより、失敗の経験レベルを技術に昇華していく日々の努力につながっていくわけです。

次回は今回説明した技術伝承にブレーキをかける三つの壁についてもう少し詳しく説明し、どうすればこれを克服できるかについてお話します。 

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