生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第15回 価値を高めていない行為】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。このシリーズのコラムでは、「IE」の考え方に関する情報をお届けしております。
15回目の今回は、「価値を高めていない行為」についてです。
目次
作業の中から排除すべきこととは?
作業の中から排除すべきことは何でしょうか?
それは「製品の価値を高めていない行為」です。
これまでのコラムでその中のいくつかの例を紹介してきました。ここでは、下記の11項目をピックアップし、再確認させていただきます。
製品の価値を高めていない行為① 歩行
歩くことは健康にはいいですが、作業効率的にはよくありません。作業をしていないで、持ち場から離れていることになるからです。
歩いている人が多いということは、「皆が仕事をしていない」と言われても仕方がありません。
製品の価値を高めていない行為② 待ち
待つことは相手があることで、受動的な動きになります。相手次第になり、ペースに巻き込まれてしまいます。
待つのは「作業バランスが取れていない」といえますから、ここを改善しなければなりません。
製品の価値を高めていない行為③ 運搬
モノを運ぶ行為は重要に思われるかもしれません。しかしこの行為は、“ただ単にモノの位置を変えているだけ”とも言えます。
モノの位置が変わっても付加価値は高まりません。モノの位置が変わらなくても加工ができるようにすることこそ、真の改善です。
製品の価値を高めていない行為④ 監視
設備の状態、人や製品の様子をただ眺めている「監視作業」は決して付加価値を高めているのではありません。
付加価値は、加工する設備や人が高めているのです。監視しなくてもいいように改善すべきです。
製品の価値を高めていない行為⑤ 様子見
例えば、製品供給の担当者が工程の進み具合や、部品の減り具合の様子を確認するために動きまわるのはムダな行為です。
「必要な時に必要なところへ」供給できればいいのですから、そのための合図を考えればいいのです。
製品の価値を高めていない行為⑥ 判断
判断はできるだけ避けるべきです。
判断に迷うということは、判断に必要な知識や基準が頭に入っていないと言うことです。判断ミスを犯す可能性もあります。
製品の価値を高めていない行為⑦ 確認
どうしても判断つかないことを、誰かに、あるいは図面や書類で確認することは、作業を止めていることになります。
当然、その間製品の付加価値は高まりません。
製品の価値を高めていない行為⑧ 整頓
ものを整頓するということは、ただ位置を変えるということです。それは価値を高めません。
作業しやすいように整頓するのではなく、「整頓しなくても作業できるようにする」のです。
製品の価値を高めていない行為⑨ 準備
段取り替えも含めて準備作業はある程度必要ですが、これも付加価値を高めていないので最小限にとどめるべきです。
すぐに製品を切り替えられるシングル段取りは、設備の停止を最小にする最高の方法です。
製品の価値を高めていない行為⑩ 打ち合わせ
全くないと意思疎通ができないので、最低限の打ち合わせにして、ほかの方法で連絡できないかということを検討します。
案外打ち合わせの中で、口頭で言われたことは忘れてしまうものです。文書で確認できるようにしましょう。
製品の価値を高めていない行為⑪ 休憩
適度な休憩は、人のパフォーマンスを最高に保つためには必要です。特に、集中力や注意力を要する作業の場合は重要です。
逆にこのような疲労が激しい作業は機械化して、休憩が少なくてもすむようにしなくてはなりません。