生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第22回 設備の維持管理】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。これからこの「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
22回目の今回は、「設備の維持管理」についてです。
5Sの清潔にあたる「維持管理活動」
5Sでいうところの清潔にあたるのが「維持管理活動」です。それには継続的な清掃も含まれます。清掃を実施して初めて設備の清潔が保たれるからです。
さらに設備の維持管理には、設備の原状復帰も含まれます。
設備は新品を購入して設置したときは、当然きれいなはずです。それが徐々に汚れてきて錆が出たりするようになると、性能にも影響が出てきます。それを復帰させ、元の性能に戻すことも設備管理では大切な活動です。
「原因を生まないためにどうするか」これも設備の維持管理
そもそも設備が汚れたり、ゴミや切り粉・カスが溜まるのは、それが機械自身から生み出されるからです。その根本を立つことも考えなければなりません。
油の飛散は汚れの大きな原因です。飛散するから汚れるので、飛散させなければいいわけです。「そのためにどうするか」、これも設備の維持管理です。
食品や医薬品工場では細菌や腐敗を防がなくてはなりません。常に清潔を保たなければならないわけで、維持管理の徹底が求められます。
古い設備が並んだ工場の事例
古い設備がたくさん並んでいる工場へ支援に行ったときのこと。
その工場は、設備がどれも汚れており、その状態が当たり前になっていました。
そこで、設備を順番に徹底清掃しました。そうすると、今までごみで詰まっていた溝や、油の通り道がみつかり、クーラントが正常に流れるようになりました。
それまでは、溢れたクーランドが別の流れ道をカスの間に作ってしまっていて、それが正常であると作業者たちは思い込んでいたのです。正しい通り道がみつかってびっくりしていました。設備の錆を落とし、ペンキを塗り替え部品を交換すると設備は見違えるようになりました。当然トラブルも減り、結果的に性能を向上させることができました。
設備の維持管理は設備が古くなって汚れてくると、最低限のことしかしなくなります。しかし、生まれ変わるくらいの徹底さで清掃調整すると、寿命も長くなりメリットは非常に大きいものがあります。