生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第26回 ライン設計】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
26回目の今回は、「ライン設計」についてです。
最適な生産ラインが高い生産性を実現
工場の生産性を検討するとき、「生産ラインの設計」は大きなテーマです。最適な生産ラインが実現できれば、理想的な工場となり、高い生産性を実現できます。
生産ラインの形態は大きく分けて3つあります。
生産ラインの形態① 工程別ライン
機能別ラインともいいます。加工特性ごとに、工程あるいはグループを作り製品を流していく方法です。設備が集約できるメリットがありますが、工程途中で同じ設備を何回か通過する場合には行き戻りが発生し動線が長くなります。また工程別に分かれてのレイアウトになるので、その間に仕掛品が溜まりやすくなります。
生産ラインの形態② 品種別ライン
ひとつの製品あるいは製品群を専用ライン化して、必要な設備を工程順に並べたラインを品種別ラインといいます。モノの流れがスムーズになり、1個流しも可能になります。停滞も最小限にすることができるので、リードタイムが短縮されます。工程別ラインより効率的ですが、負荷の低い設備もライン数分必要なので設備が増えるのが欠点です。
生産ラインの形態③ セルライン
品種別ラインを発展させた形がセルラインです。ラインというよりも、1つのセルとして一箇所で最初から最後まで加工するので、停滞がほとんど発生しません。1人セルなら最小リードタイムでの生産が可能です。コンパクトな生産ラインとなるが、工程が多いと複数の設備を動かすため作業者の負担は増えます。
生産ラインは状況に応じて変えていくべきもの
生産ラインは、自社の生産特性に合わせて最適なものを設計する必要があります。ラインの形態は一度決めたら変えないものではなく、そのときの生産品目や設備などの状況に応じて変えていくべきものです。
よく、昔からのレイアウトで生産し続けている工場を見かけます。「生産ラインとはこういうもの」という固定観念が出来上がってしまっているとしか考えられません。柔軟な発想をしていくことが必要となります。