生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第28回 ラインバランス】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
28回目の今回は、「ラインバランス」についてです。
各工程のタクトを測定、バラツキをみる「ラインバランス」
工程順にラインが組まれている工場はたくさんあります。複数の作業者が順に作業していく場合、どうしても加工タクトの差がうまれ、遊びが生じます。ネック工程は追われることになります。ラインの生産性は、このネックのペースで決まってしまいます。
各工程のタクトを測定し、そのバラツキをみるのが「ラインバランス」です。これが100%であれば完全同期ということになります。しかし、実際にはそれを実現するのは非常に難しいものです。
ラインバランスのよさを表す「ラインバランス率」
ラインバランスがどのくらいいいのかを表すのが「ラインバランス率」です。これは、ラインの平均タクトをネック工程のタクトで割ることで求められます。
この値が高いほど、バランスのいいラインということになり、遊びの少ない効率的な生産ができます。ラインバランス率が90%以上であれば、1個送りも可能になります。それ以下ではしばしば溜りを生じるので、改善や工程の再配分によってタクトを合わせる必要が出てきます。
ラインバランスは工程グループでも応用できる
このラインバランスは、ひとつひとつの作業工程での考え方が基本です。しかし、工程グループでも応用して考えることができます。
つまり、いくつかの作業工程を組み合わせて工程グループを作り、そこへの材料の投入から完了までのタクトを、各工程グループで合わせていくということです。設備や加工によってどうしてもバランスが取れない場合には、グループ単位で考えることで溜りを作らずモノの流れをよくしていくことができます。
ラインバランス率が低い場合の対応策3点
ラインバランス率が低い場合の対応策として、考えられるのは、下記の3点です。参考にしてみください。
①応援
遅れている工程、トラブルが生じた工程へリリーフマンやリーダーが一時的に応援に入ること。タクトが回復したら、あるいは溜りが解消したら応援をやめます。
②助け合い工程
工程間に、前後どちらの作業者もできる「助け合い作業」を一つ設定します。前工程が遅れていれば、後ろの工程でその助け合い工程を作業します。逆に後ろ工程が遅れていれば前の作業者が行います。
③工程分割
ネック工程で1人の作業者が行っている一連の作業を分解し、要素作業単位で前後工程へ振り分けます。設備が制約になっていると実現は難しくなります。