生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第29回 セルでの生産性】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。これからこの「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
29回目の今回は、「セルでの生産性」についてです。
「1つのセルには1人の作業者」が原則
「セル」は、それ自体にはラインという概念がありません。1人で作業するのが原則なので、バランスというものがありません。例外として、セルを工程グループとみなし、いくつかのセルを連続的に配置して全体のラインを構成するという形態を取る工場はあります。いずれにしても「1つのセルには1人の作業者」というのが原則です。
組立工程にたくさんのセルが並ぶ工場の例
ある工場では、組立工程にたくさんのセルが並んでいました。
1つのセルでは幾つかの作業を行います。セルは製品別に構成されていたので、生産計画によって生産数量の少ないセルと多いセルが発生します。作業者によっては、いくつかのセルで作業できるくらいの熟練度があります。したがって、生産量の少ないセルでの作業が終わると、他の製品のセルに移っていくというスタイルで生産を行っていました。
「セルの専用化」という視点ではいいのですが、製品の種類だけセルを準備しなければならないのでスペースと設備・工具などのリソースがたくさん必要になります。
逆に忙しいセルでは、生産量が間に合わないために応援が入っていました。1つのセルに2人の作業者が入ると生産量は上がります。しかし、作業の干渉が生じて2倍とはなりません。どうしてもロスが生じてしまいます。できるだけセルの2人作業は避けるべきでしょう。
解決する方法は、「セルのフレキシブル化」
それを解決する方法は、「セルのフレキシブル化」です。
理想は、1つのセルでいろいろなものに対応できるようにすることです。生産量の多い製品は1つのセルだけでなく2つ3つのセルで生産します。そうすることで2倍3倍の生産量アップが実現します。先ほどお話した工場でも、セルのフレキシブル化と作業員のマルチスキル化を推進し、1人セルの利点を最大に活かすことができるようになりました。