生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第6回 合理化の3S】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。これからこの「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしてまいります。
6回目の今回は、「合理化の3S」についてです。
合理化の3Sとは?
合理化の3Sは知っている方も多いのではないでしょうか?知らない方のために簡単に解説すると、合理化の3Sとは下記のことを言います。
①単純化(simplification)
②専門化(specialization)
③標準化(standardization)
単純化・専門化・標準化のそれぞれの違い
作業は「単純化」すれば、リズムもつかみやすいし、習熟も早く、必要な工具や用具も少なくて済みます。
逆に、作業を「専門化」すれば、特定の作業に習熟するし、知識も増えます。いくつもの業務を掛け持ちするのは負担も大きくロスも大きくなるので、専門化することのメリットはあると思います。
また、作業を「標準化」することで、だれでも同じ出来栄えで作業ができるようになります。処理するスピードが一定化するので、計画も組みやすくなります。
「事務作業の改善」についての事例
一つ、事務作業の改善についての事例をご紹介します。以前の話にはなりますが、あるメーカーの受注センターでの話です。
大勢のオペレーターが全国の代理店や卸店からの注文をさばいていきます。締切時間が決まっていて、注文を集計してその日に出荷するための伝票を作成するのもオペレーターの役目です。注文は当時まだFAXが中心でした。問題は注文が集中すると時間がかかり締切時間に間に合わないこと。そうすると出荷伝票の出力も遅れて、荷物の積み込みも遅れてしまいます。当然トラックの出発も遅れてしまいます。さらにかなり遅れた場合には一部の注文を積み込まずに出発させて、後から1便を仕立てて出荷することも行われていました。ここで発生するロスは運転手の待機時間への支払いと、予定外の運賃発生でした。もちろんオペレーターの残業も発生します。
注文受付と確認、コンピューターへの入力、電話対応が締切までの主な作業です。
作業風景をビデオに取り確認してみるといくつかの点で問題が見つかりました。
1つはFAX注文用紙をひっきりなしに取りに行ってるために歩くこと。2つは入力作業中に電話がかかってきて作業が中断されること。手書きのFAXが多いので間違えないように客先に電話を掛けることが多いこと。
まず、FAXの位置を変えて歩かなくても済むようにしました。これで1回に付き数秒の短縮。電話は応対専門のオペレーターがまず対応することで、必要なときだけ業務オペレーターにつなぐようにしました。これで電話時間の削減と中断によるロスが削減されます。さらにOCR等の活用と当社指定の注文用紙に変更を客先に依頼しました。これでこちらからかける電話は激減。
その他にも細かい改善により業務工数を大幅に削減できました。作業をじっくりと観察すると気がつかない問題がいろいろ見つかり、効率を上げることができるのです。
この事例では「合理化の3S」が当てはまる
この事例では合理化の3Sがまさに当てはまるケースです。
ほかにも入力項目の見直しや、そもそも入力作業そのものを削減する単純化や、さらに業務を細分化して入力担当や確認担当などを分けて勤務シフトまで替えることで専門化を推進したりと、いろいろな改善に活用できました。